あぐれいのメモ

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ベーシック圏論 ノート1(圏同値)

ベーシック圏論を読んでいてよくわからなかったところの自分なりにわかりにくかったところをまとめたいと思います。

間違っている部分はご指摘いただけるととてもありがたいです。

 

圏同値について

ベーシック圏論P39において圏同値の概念が説明されていますが、私はここで詰まりました。

 

「関手の同一性があまりうれしくないので同型性にしてしまえ」

ということなのですが、なにぶん私が本を読むのが苦手なものでよくわからなかったのです。

 

初めてのまとめなので、まずは圏の定義から書きましょう。

定義:圏とは

   ・対象の集まり

   ・各対象A,B間のAからBへの射の集まり

   であり、射の合成ができ、結合法則、単位法則が成り立つものである

 

結構簡単な定義だと思います。特に普段群論などに慣れ親しんでいる方々にとっては簡単に思うのでしょうか。

 

圏の例としては「対象が群、射が群準同型」であるものや、「対象が位相空間、射が連続写像」であるものなどがあげられます。ベシ圏に無いもので言えば、多様体の圏などもあります。

 

先へ進みましょう。「圏を対象に持つ圏」を考え、その対象間の射は「関手」と呼ばれます。関手は射なので、当然圏の定義に出てくる射の性質を満たします。

 

さらに、「関手を対象に持つ圏」(これを関手圏と呼ぶ)を考え、その間の射を「自然変換」と呼びます。自然変換の定義はちょっと書くのが面倒なので省略します。ごめんなさい。

 

とりあえず知っておくべき基本的なものは書きました。ここから一歩ずつ圏同値に近づいていきましょう。

 

いきなりですが、「集合の2つの元が同じ」とはどういうことでしょうか。これは集合の元aと同じ集合の元はaであるということなのですが、つまるところ、元の同一性を要求しているわけです。

 

では、二つの群が同じであることを私たちはどのように認識しているのでしょうか。

二つの群が同型であるとは「二つの群の間に群準同型写像があり、その逆写像も群準同型」ということでした。

ここで大事になってくるのは、「集合の元(群は演算が入った集合なので)の同一性は全く無視している」ということです。確かに元の同一性を課すのはあまりに厳しいような気がします。自由さがなくなって面白くなさそうだなとおもいます。

なので圏では対象の間に同型性を要求します。そうすることで、「群を対象に持てば群同型、位相空間を対象に持つならば同相」のように、これまで慣れ親しんだ概念に当てはまります。これを圏の言葉で書くと

 

圏において二つの対象A,Bが同型であるとは、「AからBへの射fとBからAへの射gが存在し、fg=1_B,gf=1_A (等号の右辺は恒等射)である」となります。こういうfを「同型射」とよびます。

 

以上のことから同一性は圏においては強すぎであり、同型性が適切だとわかります。

では、圏が同じであることはどうやって定義すればよいのでしょうか。

群や、位相空間は群同型写像同相写像があればよいのでした。圏にもそのようなものを考えられるのでしょうか。

 

話の流れを考えれば圏の間の同型を考えればよいように思えます。しかしこれだと実はとても強い条件を課していることになります。ここの説明に関手圏が出てきます。

 

仮に、二つの圏CとDが同じであることを同型であることにすれば、その間の射(関手なのですが)F(C→D),G(D→C)が存在して、「FG=1_D,GF=1_C」 が成り立ちます。これは関手圏で考えると、対象(関手)の同一性を要求していることに気が付きます。同一性はとても強すぎる条件であったのでこれではいけない。圏が同じであることの定義をもう少し緩めたくなります。

 

つまり関手の合成が恒等射と同一であることが強すぎるので、これを同型にしてしまえば良いわけです。ここで登場するのが「自然同型」という概念です。これは関手圏の同型射のことです。これを用いることで、「二つの圏が同じ」ということを定義できるようになり、それを「圏同値」といいます。では定義しましょう。

 

定義:圏CとDの間の圏同値とは、CD間の関手F(C→D),G(D→C)と自然同型η:1_C→GF ε:FG→1_Dからなるものである。これらが存在するとき、CとDは圏同値であるという。

 

これで圏が同じであることをうまく定義できました。また何かあるたびに更新していこうと思います。

ではでは